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至福の時が生み出す絶妙なマリアージュ

TeraとRojiと 2020 Spring出展作家 おかしやのん

July 18, 2020

お酒とお菓子が大好き!というポジティブなオーラに溢れたおかしやのんさん。その手から生まれるおかしにはのんさんの「好き」が詰まっていて、食べる人を幸せにしてくれます。

− どのようなものを作っているのですか。


「おつまみおかし」という、普通のお菓子とは少し違って胡椒や唐辛子などを使って味にパンチを効かせるなどしてお酒を引き立てる「おかし」です。お酒と一緒につまみながら食べていただきたいので、サイズ感もあえて小さめに作っています。


商品としてはクッキー、スコーン、パウンドケーキなどを作っています。最初は限られた種類しか用意できなかったのですが、イベントに出店するたびにお客さまから「新しいものも食べてみたい」といったリクエストをいただくことも多く、ラインアップを増やしていくことになりました。


バターもお砂糖もたっぷり入っているお菓子はとても美味しいのですが、食べた後に少し後ろめたい気持ちになってしまうこともありました。作ったお菓子は自分でも食べたいので、「おつまみおかし」は特にお砂糖を控えめにするなど、罪悪感なく安心して楽しめるお菓子になるようにしています。



− 「お酒とおかしのマリアージュ」というコンセプトはどうやって生まれたのですか。


クラフトビールを飲んでいる時に思いつきました。ピスタチオに黒胡椒をかけておつまみとして食べていた時にひらめいてすぐに試作したんです。それがすごくうまくいったので、ほかの素材についても組み合わせを考えて試作を重ねていきました。



− どのおかしも美味しそうです。それぞれ合わせるお酒のイメージがあるのですね。


パッケージを見れば、ビール、日本酒、焼酎などそれぞれの商品にオススメのお酒がわかるようにしています。


イベントで一番人気なのが、ビールに合わせるイメージで作っているピスタチオと黒胡椒のクラッカー(上段・左から2番目)です。最初はピスタチオの味がするのですが、最後にスパイスの風味が感じられるので、面白いと言っていただくことが多いです。お酒を飲まない方にも好評で、コーヒーに合うとおっしゃる方もいました。


これは味噌と七味とうがらしを使って作ったクッキーです(上段・真ん中)。最初は少し甘みがありますが、後味として七味の風味が効いているのでビールにすごく合います!辛いだけではなくて甘さや風味も楽しんでいただけると思います。


パウンドケーキも作っていて、今日ご紹介するのはオレンジピールを使ったものです(上段・右端)。パウンドケーキというとしっとりしていて甘みがあるものが多いと思うのですが、これはオレンジピールの味を楽しんでいただきたいので、味を引き立てられるようにお砂糖の甘さを抑えて、バターの量も控えめにしています。冬には柚子を使ったものを出すなどシーズンごとに異なる種類のものをご紹介しています。



− 「おかしやのん」としておつまみおかしの販売を始められたきっかけはどのようなことだったのですか?


お菓子は小さい頃から作っていましたし、自分でものを作るということに対する憧れはずっとありました。就職活動をしていた時は企業での商品開発に興味があったのですが、結局は管理栄養士の資格を活かして病院に勤めることになりました。


そんな中で、マルシェのようなイベントが流行り始めて足を運ぶようになったときに、イベントに出展している作家さんたちが想いを込めて作ったものをお客さまと対話しながら販売している姿を見て、とてもイキイキしていて楽しそうだと感じたんです。自分のやりたいことはこれだ!と気づきました。


イベントへの出展なら土日に多く開催されているため仕事を続けながらでもできると考え、早速行動に移しました。



− 実際に活動を始められてからはいかがでしたか。


まずはホームページとInstagramを開設して、自宅のキッチンで試作をしたものを写真に撮って載せていきました。お菓子を販売するためには製造場所を見つけて許可を取らなければならないのですが、ちょうど元々親戚が経営していた飲食店の場所を改装して使えることになったのはタイミングが良くラッキーでした。


製造販売の許可が取れてからは毎週末イベントに出店するようになりましたが、平日は仕事をしていたので本当にへとへとになりました。でも自分がやりたかったことなので、大変ながらも両立はできていましたね。


「おかしやのん」として活動を始めたばかりの頃は、管理栄養士の友人にはそのことを話していなかったんです。友人たちは私がお酒を好きなことも知っていたので、活動について知ってもらってからは「のんちゃんっぽいね」「お酒に合うお菓子ってすごくいいアイデアだと思うよ」「買いに行くよ!」などと言ってもらえて、なんだかほっとしました。


当初は専門性の高い管理栄養士の資格が必ずしも必要ではないお菓子の製造販売をするのはどこか引目を感じることもあったのですが、「やりたいと思っても本当に始める人は少ないからすごいと思う」という言葉もかけてもらったことで、「お菓子を作るなんて誰でもできることだ」というのは勝手な自分の思い込みであったことに気づきましたね。


− 活動されていくうちに、ご自身の中で変化はありましたか。


最初はやりたかったことを始められて嬉しいという想いでいっぱいでしたが、今は「おつまみおかし」をより多くの人に知っていただきたいと思っています。ですから、イベントにももっと出店していきたいですし、情報発信にも力を入れていきたいです。


イベントに出店していると、「お酒が入っているの?」「甘くないの?」などと聞かれることがよくあり、おつまみおかしというものを直感的に理解していただくことには難しさを感じます。でも試食などで実際に食べていただくと気に入っていただくことが多いので、まだこういうお菓子を食べたことのない方にぜひ召し上がっていただきたいです。


私はお酒を飲むのが好きなので晩酌の時間が至福の時なのですが、その楽しい時間をよりわくわくするように演出できるようなものを多くの方に届けたいと思っています。ですから、お酒についても、もっと勉強をして知識を得たいと思うようになってきました。


− そうやって勉強したいという気持ちが大きくなって、フランスに行かれたんですよね。


そうなんです。フランスワインをもっと知りたいと思ったのがきっかけでしたが、もちろんお菓子の本場というイメージもありましたし、農業大国なのでチーズなどの素材を知りたいという思いもありました。現地ではワイナリーにファームステイをして、ブドウ畑しかないような自然のなかで過ごしていました。


ワイナリーで過ごしていて気づいたのは、美味しいフランスワインを作るのはすごく工程が多く手間がかかるということです。フランスワインだけではないとは思いますが、原料となるブドウを育てて、収穫して、タンクに入れて…という一連の作業を見せていただいて、ワインってとても貴重なものなんだなと感じました。もっと味わって飲まなければという想いが一層強くなりましたね。


ワイナリーの葡萄畑での収穫の様子(作家より写真提供)

ワイナリーで製造しているワイン(作家より写真提供)


現地の食生活からも影響を受けました。マルシェでありとあらゆる種類のチーズを量り売りで買ってきて、それぞれを違ったワインに合わせるのが楽しかったです。食事に合わせて次々ワインを変えるということがフランスでは一般的なんですよね。チーズとお酒の合わせ方も勉強になりましたし、フランスの家庭的なお菓子もレシピを教えてもらってよく作っていました。


フランス滞在中はイタリア、ドイツ、スペイン、ベルギーなどの周辺国をはじめ、フィンランド、スウェーデンなど北欧も巡り、各地の食文化からも大きな刺激を受けました。



− ヨーロッパ各地を回る中で生まれたお菓子もありますか。


そうですね。ドイツのクリスマスマーケットで見つけて買ってきたプレッツェルの金型を使ってみたり、フィンランドやスウェーデンでシナモンやカルダモンをたっぷり使ったお菓子と出会って新しいレシピを考えたりしました。今後イベントなどに参加できるようになった時には多くの方に召し上がっていただきたいです。



現地で堪能したチーズ(作家より写真提供)


− 今回TeraとRojiとに出展しようと思ってくださったのはどのようなきっかけからだったのでしょうか。


谷根千は雰囲気も好きなエリアで、時々遊びに来ていました。お酒やお食事が美味しそうなお店もたくさんありますよね。TeraとRojiとは洗練されている感じもするし、他の出展作家さんたちもおしゃれで、そういう方々とお話もしてみたいと思って応募しました。


これまでのイベント出店でも、試食していただきながらお客様のお好きなお酒にあう商品をオススメしたり、逆にお客様から美味しいお酒を教えていただいたりすることがありました。


ネットでの販売にも力を入れたくて試行錯誤中なのですが、TeraとRojiとのように実際にお客様と対話しながら販売できる機会はやっぱり大切です。リピーターになってくださるお客様ができるのもとても嬉しいので、TeraとRojiとでも素敵な出会いがあるといいなと思っています。



− 今後やりたいことはありますか。


これまではイベント出店だけだったのですが、イベント以外にも買っていただける機会を作りたくて、商品を製造している店舗の空きスペースを活用して、週末だけでも実店舗で商品を販売したいと考えています。


「選べる」という楽しみを大事にしたいので商品の種類も増やしていきたいと思っていますし、店舗ができたらフランスでの体験を活かした冷菓子も販売していきたいです。


その先の目標もあります。おつまみおかしはお酒とお菓子が互いを引き立てあってより楽しめるものなので、お酒を販売する許可を取って両方を一緒に売りたいと考えているんです。


今でもそれぞれの商品がどのお酒に合うかを示しておすすめしているのですが、ただ「ビールに合います」というだけではなくて、このクラフトビールが合うとか、ワインでもフランスのシャルドネワインに合うとか、具体的にオススメできたらいいなと思っています。バーや酒屋さんとのコラボもしてみたいですね。


気軽に楽しめるようなデイリーワインやビールに合うようにするなど、高級感を出すというよりは日常の少し特別な時にも楽しんでいただけるようにしていきたいです。



「おかしやのん」は、自分のやりたいという想いから始まったので、少しずつでいいので、活動の幅を広げてもっと多くの方に知っていただけるようになったら嬉しいです。

お客さまに喜んでいただけるように、自分も楽しみつつ、ワクワクから生まれるマリアージュを今後もご紹介していけたらと思っています。



− 今後、どのような素敵なマリアージュを届けてくださるのか楽しみです。本日はありがとうございました。


ありがとうございました。






執筆 - 藤沼 はるこ(ふじぬま はるこ)

写真 - 折尾 大輔(おりお だいすけ)

編集 - 川上 智子(かわかみ ともこ)


 

インタビューした作家


おかしやのん(西木規恵)

大人のおつまみおかし専門店。大学の栄養学部を卒業後、管理栄養士として病院や施設に勤務。

2017年8月に《お酒とおかしのマリアージュ》をコンセプトにした「おかしやのん」を開業。東京、神奈川、埼玉、千葉のイベント出店を中心に活動。オンライン販売も行っている。




 

TeraとRojiとではゆったりと時の流れる谷根千で作家との出会いを楽しんでほしい、という思いをもって活動しています。


そこで、作品づくりの背景やイベントに関する意見交換を作家として積極的に参加いただける出展作家さまを募集しています。


よりわくわくするような「TeraとRojiと」を一緒に創っていきましょう。

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